時計の洗浄・クリーニング

腕時計の汚れは落とせる?自分で洗浄する方法と注意点

スマートに時刻を確認でき、おしゃれなファッションアイテムとしても重宝する腕時計。使っている間に腕時計についた汚れが気になることがあるかもしれませんが、きれいに洗浄すれば落とすことができます。この記事では、腕時計を自分で洗浄する方法やそのタイミング、注意点について解説します。

腕時計の汚れの原因は?

腕時計が汚れてしまう原因は、文字盤とベルト部分とで異なります。文字盤が汚れていると感じるのは、日焼けによる色褪せやひび割れなどが原因です。また、湿気によるサビが原因で汚れている場合もあります。特にアンティークのものなど昔ながらの腕時計は防水性能が低いものが多く、湿気による影響を受けやすくなっています。精密な造りである腕時計は湿度を嫌うので、身につけている間はもちろん保管しているときにも、湿度の影響を受けないように注意しましょう。防水タイプの腕時計を使っているとしても、何年も使っていると経年劣化により購入時ほどの高い防水性はなくなっているかもしれません。また、防水仕様であっても完全に湿気の影響を受けないというわけではなく、空気中に含まれている水分により文字盤が劣化することもあるので注意が必要です。 ベルト部分の汚れの原因は、ベルトの材質により異なります。金属製のベルトは、長く使っているうちに摩擦によって部品と部品の間に隙間が生じます。その隙間に金属粉や汗、ほこりなどがたまって、汚れとなってしまうのです。汚れがついているのにそのまま放置していると、いったんたまった汚れが汗などにより溶け出し、衣類や手首などに黒い汚れとなってついてしまうことがあります。ステンレスやチタンでできた腕時計は、着用している間に汗をかくことでサビが発生することもあります。革製のバンドの場合も、主に腕時計をつけているときにかいた汗が汚れの原因です。革のバンド部分が汗で濡れたままになっていると、雑菌が繁殖して嫌な臭いの原因となってしまうこともあるので気をつけましょう。

腕時計の汚れは取れる?

腕時計の汚れは見栄えが悪いだけではなく劣化の原因ともなってしまうため、気づいたらできるだけ早くきれいにメンテナンスしたいものです。汚れをきれいに落とせるかどうかは、汚れのついた箇所によって異なります。文字盤に汚れがついている場合、それは正確には汚れではなく、汚れに見える劣化です。そのため、いくら洗浄してもきれいに落とすことはできません。文字盤をきれいにしたいと思うのなら、洗浄するではなく修理に出す必要があります。このとき、古い腕時計を使っていると、交換が必要なケースでも新しい文字盤がないこともあるかもしれません。その場合は、リダンと呼ばれる方法で研磨をしたり、再塗装をしたりして修理をするのが一般的です。汚れているようにくすんで見えた文字盤も、輝きを取り戻してまるで新品のようになります。一方、腕時計の本体部分やベルト部分の汚れを何とかしたいときは、洗浄すればきれいに落とすことができます。

こんなときは洗浄のタイミング

精密な造りである腕時計には、「定期的に洗浄をしなければならない」というイメージはあまりないかもしれません。洗浄できれいになるといっても、どのタイミングで洗浄すればよいのだろうと思う人も多いでしょう。洗浄した方が良いタイミングとしてわかりやすいのは、腕時計をつけていて黒い汚れがついたときです。たとえば、一日着用していたシャツの袖口に、黒い汚れがあることに気づくかもしれません。その汚れがついているのがシャツの片方だけで、しかも腕時計をつけていた方であるなら、腕時計にたまった汚れであると判断できます。また、腕時計をつけているときに汗をかいたら、黒い汚れが手首につくこともあるでしょう。このように黒い汚れがシャツや皮膚につく場合は、腕時計の洗浄が必要だというサインと判断できます。通常腕時計の汚れは目に見えないことが多いですが、外からの汚れや皮脂などがたくさんたまると、目に見える汚れとして表れてくるのです。 腕時計をつけている部分の皮膚に異常が出ることも、洗浄が必要であることを示す一つのサインです。腕時計本体の裏側やベルト部分、本体とベルトのつなぎ目などにたまった汚れが、皮膚のかゆみや赤み、かぶれなどを引き起こします。とはいえ、こうした症状は腕時計の汚れではなく、金属アレルギーが原因であるケースもあります。汚れをきれいに落としてもこうした症状が改善しない場合は、金属アレルギーなのかもしれません。金属アレルギーにより皮膚に異常が出ているなら、皮膚科に相談してみる、腕時計の材質をアレルギーが出にくいチタンに変えてみるなどの対策が必要です。

自分で腕時計を洗浄する方法

腕時計を洗浄する必要を感じても、具体的にどうすれば良いかわからないという人は多いでしょう。時計専門店などに洗浄を依頼することもできますが、実は自分で腕時計を洗浄することも可能です。自分でやるやり方を知っていれば、汚れが気になったときに自宅でいつでもきれいにできます。人目につきやすい腕時計を、いつもピカピカな状態で気持ち良く使うことができるでしょう。自分で洗浄する方法は主に2種類あり、重曹を使う方法と眼鏡洗浄剤を使う方法です。このほかにも、綿棒とエタノールを使う方法やつまようじと中性洗剤を使う方法などもありますが、細かい作業で骨が折れるだけでなく時間もかかります。重曹を使う方法または眼鏡洗浄剤を使う方法ならどちらも簡単に洗浄でき、時間もそれほどかかりません。2つの方法のうち、自分がやりやすいと思う方法を試してみると良いでしょう。

腕時計の洗浄方法1「重曹を使う」

1つ目の重曹を使った洗浄方法で用意するものは、重曹・ぬるま湯・腕時計を入れる容器だけです。特別なものは必要なく、自宅にあるものを使って簡単に洗浄できます。容器は不要になった透明カップなどでかまいませんが、腕時計を水にしっかり浸せるだけの大きさのものを用意しましょう。まず、容器にぬるま湯を入れ、そこにスプーン1~2杯ほどの量の重曹を入れてよくかき混ぜます。これが、腕時計にたまった汚れを落としてくれる洗浄液となります。洗浄液ができたら、腕時計をその中に浸して10〜15分程放置しましょう。時間が経つと重曹水の中に腕時計の汚れが溶け出し、黒いものが浮いたり重曹水の色が黒っぽくなったりします。腕時計に汚れがたくさんたまっている場合は、15分よりも長めに放置して様子を見ましょう。汚れが落ちたら腕時計を容器から取り出し、きれいな流水ですすぎます。最後に乾いたきれいな布で水気をよく拭き取り、乾かしたら終了です。 この方法では腕時計を水に浸したり流水ですすいだりするため、防水仕様の腕時計でなければなりません。時計部分が防水仕様ではない場合は、ベルトだけ外して洗浄しましょう。防水仕様ではない時計部分を水に浸したりかけたりすることがないように、注意が必要です。また、ベルトだけを洗浄する際にも、洗浄できるのは金属製のベルトのみです。革製のベルトは変色などの原因となるため、水に浸して洗浄することはできません。

腕時計の洗浄方法2「眼鏡洗浄剤を使う」

2つ目の眼鏡洗浄剤を使う方法で必要なものは、水・眼鏡洗浄剤1回分・腕時計を入れる容器です。普段眼鏡をかけていて眼鏡専用の洗浄剤を使っているなら、それをそのまま使うことができます。眼鏡をかけていないなどで眼鏡洗浄剤が手元にないなら、近くのドラッグストアやスーパーなどで購入しましょう。容器は重曹を使った方法と同じでどのようなものでも構いませんが、腕時計をしっかり浸せるだけの大きさのものを準備します。まず、容器に水を入れて、その中に眼鏡洗浄剤1回分を投入します。次に腕時計を入れて、そのまま5分ほど放置しましょう。眼鏡洗浄剤はタブレットタイプのものが多く、水に入れるとポコポコと発泡して汚れをきれいに落としてくれます。洗浄剤がすべて水に溶けてなくなり、泡が消えて水が透明になったら洗浄が終了したサインです。先に洗浄液を捨ててから腕時計を取り出し、きれいな流水ですすいでから乾いたきれいな布で拭いて乾かしましょう。 腕時計を洗浄液に浸しておく時間は、使用する眼鏡洗浄剤によって異なります。眼鏡洗浄剤の使用方法をよく読んで、注意点にしっかり留意しながら行いましょう。眼鏡洗浄剤によっては使用できない金属もあるので、腕時計の材質も必ず確認しておきます。また、水に浸すことになるので重曹を使った方法と同様、防水仕様でない腕時計を洗浄することはできません。防水仕様でないものを洗浄するときは必ず本体からベルトを外して、ベルトのみ洗浄するようにしましょう。洗浄できるのは金属製のベルトのみであり、革製のベルトは洗浄できないことにも同じように注意が必要です。

革ベルトが臭う場合は脱臭する

革製のベルトは水で丸洗いすることはできませんが、臭いが気になる場合には脱臭することができます。革は丈夫な素材で長持ちするものの、タバコや汗、香水、食べ物などの臭いを吸収してしまうことがあります。革ベルトの臭いが気になったら、気持ち良く使えるようにお手入れとして脱臭してみましょう。用意するものは、重曹・ビニール袋・布です。布は、重曹が出ない程度に細かい織り目で、ハンカチほどのサイズのものを用意します。家にあるハンカチをそのまま使っても構いません。まず、大さじ3杯程度の重曹を布で包んで、ビニール袋に入れます。次に、腕時計の革ベルトも一緒にビニール袋に入れて、封をしたら2〜3日程そのまま置いておきます。 この脱臭方法は、重曹の消臭作用を利用したものです。重曹は、天然素材である革にも安心して使えます。使用しているうちについた汚れはもちろん、新品の腕時計で革の臭いが気になるときにも試してみると良いでしょう。臭いがひどいときは、重曹を布に包むのではなく、革部分に薄く振りかけてビニール袋に入れておくこともできます。その場合、放置するのは1晩程度にし、小型掃除機やきれいな布などを使ってやさしく重曹を取り除きましょう。ビニール袋の代わりに、ジッパー付きの保存袋を使うこともできます。また、重曹の代わりに炭を使っても脱臭できます。やり方は重曹を使う場合と同じで、重曹を炭に変えるだけです。炭にも脱臭作用があり、重曹と同じように革についた臭いを吸収してくれるのです。重曹や炭を使うと、そのまま自然に放置しておくよりもずっと臭いは少なくなります。

腕時計を洗浄する際の注意点

腕時計を自分で洗浄するときには、いくつか気をつけたいことがあります。その1つ目は、防水の程度です。防水仕様の腕時計であればベルトを外さずに本体ごと洗浄することができますが、その場合でも防水の程度がどのくらいなのか確認しておくことは欠かせません。一口に防水仕様といってもさまざまな程度のものがあり、どの程度の深さの水に耐えられるかは異なるからです。 日常生活用の防水腕時計であれば、一般的なのは2〜5気圧程度の防水仕様になっています。この場合において想定されているのは、洗顔や水仕事などで軽く水がかかることや、雨で軽く濡れることなどです。基本的に日常生活で軽くかかる水に耐えられる程度の造りなので、水やお湯の中に完全に浸してしまうのは避けた方が良いでしょう。日常生活用であっても強化防水時計で水泳・ヨット・釣りなど水上スポーツに対応しているものもありますが、防水がどの程度のものかわからない場合は、水の中には入れないのが無難です。 2つ目は、金属の種類です。眼鏡洗浄剤や重曹を使った洗浄方法は手軽ですが、金属によっては向かないものもあります。洗浄する前に、自分の腕時計の金属の種類は何なのか、眼鏡洗浄剤や重曹を使用しても問題ないのかどうかしっかり確認しておきましょう。腕時計を購入したときにベルトのサイズを調整した場合は、外したパーツが手元に残っているかもしれません。パーツを再度使う予定がなく不要なのであれば、それを使って試してみても良いでしょう。外したパーツで特に問題なく洗浄ができることを確認したら、ベルト部分もその方法で洗浄することができます。

腕時計はプロの技術で洗浄してもらおう

腕時計のような精密機器を自分で洗浄することに不安を感じるのであれば、プロに依頼して洗浄してもらいましょう。専門技術を持つプロに頼めば、材質や時計の造りなどに合わせて適切な方法で洗浄してくれます。自分では直せない部分も修理してもらうことができ、洗浄しただけでは落ちない文字盤の汚れも全体的にきれいになります。大事な腕時計はプロの手で定期的にメンテナンスして、いつでも気持ち良く使えるようにしましょう。

資格会員ディプロマ FGA 依田 光弘

この記事の監修者
英国宝石学協会 資格会員ディプロマ FGA
夢仕立工房 代表取締役社長
依田 光弘

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